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PRODUCTION NOTE
プロダクションノート

ユニークな三谷演出が炸裂!
寒川邸リビングのすべてに芝居場を作る――。監督の宣言通り、夫たちはリビングをとにかく動き回る。「いろいろな長回しを撮りましたが、印象に残っているのは草野と小磯が初めて寒川邸にやって来て、寒川と対面を果たすシーン。普通だったらソファに座って話し合ってもおかしくないところを、寒川にはスイカを食べてもらいながら室内を360度歩き回ってもらいました。全員にいろんな動きをつけて、4分くらいの長回しになりましたが、それを可能にできる役者さんが揃っていたので、うまくいった。撮っていても楽しかったです」(三谷監督)だが実際の寒川はスイカを食べで歩き回るだけでなく、セリフの合間合間にスイカの種を勢いよく飛ばしまくる。その姿はまるで志村けんの往年のコントのよう……。「1日であんなにスイカを食べたことはないし、スイカの種をあんなに飲んでしまったこともないです。口の中にスイカの種が残っているのに、その上から柿ピーをボリボリ食べて(笑)。でもそれが妙に楽しくて、これが寒川だなと思いました」(坂東)
三谷監督ならではのユニークな演出の数々は、三谷作品初参加の面々にはことさら新鮮に映っていた様子。「三谷さんの演出が既に面白いのに、それを素敵な役者さんたちが“この演出をそう演じてくるんだ”という驚きが常にあって。僕は撮影中何度も吹き出してしまって、正直、毎日とても大変でした。小林さんの演技がなるべく視界に入らないようにして、なんとか吹き出さずにクリアしたと思ったら、今度は別の角度から彌十郎さんが飛び込んできて逃げようがない。本当に楽しくて、きつい現場でした」(西島)「演出がすごく具体的というか、普通の言葉にプラスαでこちらが想像しやすいワードをポンと投げてくれるんです。あるシーンで彌十郎さんに、“もう少しゆっくり歩いて下さい。近所を散歩してるみたいな感じで”とおっしゃっていて。そういう何気ない一言が僕は印象的で、すっと体に入ってくるなと思いました。現場で突如生まれるアイデアも多くて、それを瞬時に受け入れて打ち返す大先輩たちを、毎日すごいなと思いながら見ていました」(松坂)「あるシーンで“気配を消してほしい。一般人が間違えてカメラに映り込んだみたいな感じで”と演出されて、むずいむずい!と思いました(笑)。他にも“スケキヨみたいなガラガラ声でセリフを言って下さい”とか。どうしても笑ってしまうんですが、それでOKを出してくれたのであの芝居で合っていたのかなと思っています」(戸塚)と口々に語る。
現場で急遽変更が出ることも。5人の夫と小磯&乙骨も全員集合しスオミの行方を推理していく、台本にして10ページ以上ある長尺シーンの前日リハーサルでは三谷監督から衝撃的な一言が放たれた。「皆さん(台本を)覚えてきていると思うのですが、ひとまず全部忘れて下さい」これには全員が一瞬フリーズした後、思わず笑顔に。そこから三谷監督ならではの新たな演出がどんどん足されていく様は圧巻の一言。5人の夫たちをズラリと横一列にソファに座らせたり、名(迷)推理を得意げに披露する小磯にその場で「小躍り」&階段まで猛ダッシュさせてみたり、空気を読まない十勝に寒川自慢のサウナをのんきに使わせてみたり、警察に電話をしようとする十勝を妨害すべく、電話線を引き抜きそれをぶん回しながら狂ったように高笑いする寒川の狂気さえ感じる芝居をつけたり、そんな最低な寒川に腹を立てた魚山が寒川の首を絞めるというコミカルな修羅場を作ったり……。加えて小磯の推理をあっさり覆す草野のヒーロー感、それにいじけて「柿ピーをやけ食い」する小磯。極めつけは男たちが全員一列になって寒川の後ろをゾロゾロとついて歩くというシュールかつユーモラスな動き。そして各キャラクターがどういう動機でこの列に加わったのかも丁寧に各キャストに伝えていく三谷監督。これで一気に画が賑やかになるばかりではなく、三谷監督と美術スタッフこだわりのセットが確かにすべて映り込んでいる!キャスト陣も終始楽しそうで、文字通り笑顔が絶えない。特に西島は、相変わらず小林の芝居がツボに入りまくったのか珍しくNGを出す。「すみません!」と謝罪する西島の姿を見ながら「他の現場でこんなに笑っている西島さんは、見たことない!」と遠藤も笑いながら驚いていた。