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PRODUCTION NOTE
プロダクションノート

今回もオールスターキャストが実現
主演の長澤まさみを筆頭に、今作でも個性豊かな実力と人気を兼ね備えたトップランナーたちが勢揃いした。三谷監督としても念願の長澤との初映画だが、それは長澤も同じ。「三谷さんの作品に出たい俳優さんはたくさんいらっしゃって、ずっと順番を待っているような状態。三谷さんは俳優の新たな可能性、新たな一面を引き出してくれる方なので、映画で初めてご一緒できるのは本当に嬉しかったです。でも台本を読ませてもらった時に、すごく難しい役だなという印象を受けて。どういう風にスオミを演じればいいのか、なかなか想像がつかなくてすごく苦しみました。でも絶対にできない役は三谷さんはやらせない方だと分かっていたので、台本を勉強するのみだなと。撮影をするのが怖いなと思いながら、毎日を過ごしていました(笑)」そんな長澤について「近年どんどんお芝居がうまくなっている。より的確に、きめ細やかになっています」と、率直に評する三谷監督。「長澤さんは、常にご自分と向き合われている方。反省もすごくするし、“やり遂げた!”という感じになかなかならず、よく落ち込まれたりすることも知っています。でも僕から見ると、俳優としてのスキルは驚くほど上がっている。このタイミングで、長澤さんの今現在持っている引き出しを全部開けてみたくなったんです。となるとこれは普通の役じゃつまらないなと。」
スオミの存在感は抜群で、例えそこに彼女がいないシーンであっても、常に誰かがスオミのことを話しているため観客は終始スオミを感じ続ける。それはいかに「自分が最もスオミのことを愛している、誰よりも理解している」ということを雄弁に芝居で表現できる5人の俳優たちがいたからだ。
スオミの4番目の夫=草野圭吾を演じた西島秀俊は、意外にも三谷組初参加。「三谷組は“手練れの方々が集まっている”という印象だったので、オファーはもちろん大変嬉しかったですが、自分にできるだろうか?というプレッシャーで緊張していました。監督からは“面白いことをやろうとせず、普通に真剣にやったら面白くなる役なので、真剣にやって下さい”と最初に言われたのを覚えています」草野はかなり神経質、かつ空気の読めない男。その絶妙なデリカシーのなさが、西島の手にかかるとどこか憎めない男になるから不思議である。「西島さんとは初めてのお仕事でしたが、映像から見る彼の几帳面さ、誠実さの裏にあるおかしみを感じていたので、西島さんがものすごく真面目に受けの芝居をしているコメディが見たいなと思ったんです。実際この草野という役は彼にピッタリはまったし、僕がこうしてほしいということを瞬時に理解してくれる、機転の速さは想像以上でした。ただ……西島さんが、あんなにゲラ(*笑い上戸)だとは思いませんでした(笑)」(三谷監督)
西島と同じく三谷組初参加となったのが、スオミの2番目の夫=十勝左衛門役の松坂桃李。「松坂さんの飄々とした感じがいいなと。もちろんかっこいいんですが、それだけじゃない一筋縄ではいかない、人間の複雑さみたいなものを彼の演技から感じていたので、是非にとお願いしました。今回は緑の髪色のせいもあるかもしれませんが、どこかカメレオン的な空気もあって“あれ?この人こんな顔だっけ?”という瞬間がたくさんあって新鮮でしたね。十勝はちょっと嫌なヤツでもあるのですが、ふとした表情で見事に表現してくれました(笑)」(三谷監督)十勝は見栄っ張りで自信家。「自信というスーツをまとっているような男です」と、演じる松坂も苦笑い。「監督からは“スオミが一番愛してるのは俺なんだぜ”くらいの気持ちでお願いしますと言われました。“草野と敵対するライバルのような感じで”とも言われて、久々に西島さんとこんな役で共演できるのは光栄だなと。オファーをいただいた時はびっくりしましたし、本当に嬉しかったです」
三谷監督とは最も長い付き合いであり、信頼関係も強固な小林隆が3番目の夫=宇賀神守役。「彼のことは昔からよく知っていますが、僕が舞台でよく見ていたこばさんの軽妙さみたいなものを映像でも見たいなと思って今回お願いしました。元夫陣の中では、こばさんがどこかで皆さんを引っ張ってくれているようなところもあり、僕としては助かりましたね」(三谷監督)ちなみに西島の笑いのツボに最もはまったのが、今回の小林の演技の数々だったという。「物語を聞いて、共演するメンバーを聞いて……大役じゃねえか!と。でも皆さんとてもいい方ばかりだったので、すぐに仲良くなれました。西島さんは僕の芝居に笑い過ぎだなと思いましたけど、悪い気はしませんでした(笑)」
スオミの最初の夫=魚山役には、三谷映画には二度目の出演となる遠藤憲一。「三谷作品は俳優なら誰でも出たいと思うので、今回も嬉しかったです。台本の段階でここまでゲラゲラ笑ってしまう本ってそんなにあるものじゃないから、改めてすごい才能だなと思いました」そんな遠藤のことを「顔がいい!」と絶賛する三谷監督。「涙ぐんでる遠藤さんの顔って、本当にパワーがあるんです。今回も遠藤さんがいらっしゃるだけで、画面が引き締まる。今後もっと一緒にお仕事がしたいなと思う俳優のひとりです」
スオミの現夫=寒川役には、三谷監督が脚本を手掛けたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で北条時政を演じた、歌舞伎界で活躍する坂東彌十郎が扮し、本格映画初出演を果たす。「オファーをいただいた時は、”自分でいいのかな?”というのが最初の感想です。監督からは”寒川はとにかく最低な人です。でもちょっとジャック・ニコルソンでもあり、ある時は6歳児、ある時は4歳児でもあります”と言われて……どうしたらいいの?と困惑しました(笑)」三谷監督に真意を聞くと、「映画『恋愛小説家』のジャック・ニコルソンのイメージでお願いしますと伝えました」とのこと。「寒川という観客にあまりいい印象を与えないであろうキャラクターを、彌十郎さんなら愛らしくコミカルに演じてくださると思いました。実際想像を上回る可愛らしさと少年のような雰囲気を出してくれましたが、見た目はラスボスなので、全体をグッと締めてくださいましたね」
スオミと5人の男たちに大きく絡んでくる3人のキーパーソンも、個性派な実力者たちばかり。草野の部下=小磯杜夫には瀬戸康史。三谷作・演出の二人芝居「笑の大学」(2023年)での椿一役や、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」での北条時房役の好演が光る瀬戸は「また呼んでくれたことがめちゃくちゃ嬉しかったですし、今回はどんな役を書いてくれるのかとても楽しみでした。三谷さんと映像作品でご一緒するのは初めてなのですが、長回しの撮影は程よい緊張感があり舞台のようで楽しかったのと、舞台の時も台本に書かれていないことがたくさん起こるのですが、今回も案の定……でした(笑)」と語る。 常にスオミの近くにいる謎多き神出鬼没な女=薊には宮澤エマ。彌十郎、瀬戸同じくNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で実衣役を熱演、今年上演された舞台「オデッサ」(2024年)など近年の三谷作品に多数出演する宮澤は「私が初めて出演させてもらった映画が、三谷さんの『記憶にございません!』(2019年)でした。今回は女性陣が長澤さんと私だけで、キャストの数もそこまで多くない作品なので、少数精鋭のキャスト陣の中に選んで頂けて嬉しかったです。三谷さんの作品は脚本だけで面白いんですが、現場に行くまで何が起こるかまったく分からず、今回も色々なアイデアを出して下さって、役柄も含めてとてもチャレンジしがいのある役でした」と語る。そんな2人に対して三谷監督も「瀬戸さんとエマさんは、今、僕の作品の空気感やテンポを一番分かってくれている俳優さん。2人がいることで、他の俳優さんたちも“こんな風にやればいいんだ”ということが伝わったと思うので、僕にとってはこばさん同様、貴重な存在のお二人でした」と絶大な信頼を寄せる。
寒川の世話係=乙骨直虎には、NHK朝の連続テレビ小説「虎に翼」の轟太一役で大ブレイク中の戸塚純貴。三谷作品初出演となる戸塚は「三谷さんとご一緒するのは僕のひとつの目標で、願いでもありましたのでとても嬉しかったのですが、自分の力を100%三谷監督にぶつけられるかという怖さもありました。撮影に入ると、長回しも多くごまかしの効かない緊張感に、とてもワクワクして刺激的な毎日で、とにかく楽しかったです!」と出演の喜びとともに撮影を振り返った。三谷監督も「戸塚さんにお願いした乙骨役は、実は最後までなかなか決まらなかった。そんな時、僕が30年以上前に脚本を書いた『ヴァンプ・ショウ』(1992年初演/2022年再々演)という舞台の再々演を見に行ったら、本来古田新太さんに当てて書いた役を戸塚さんが演じられていて、それが素晴らしかったんです。完全に自分のキャラにしていた。この人はなんて凄いんだ!と思い、そこからすぐにお願いした次第です」と戸塚への大きな期待を滲ませた。