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PRODUCTION NOTE
プロダクションノート

こだわりの寒川邸セット
劇中で重要な役割を果たす、寒川邸のスタイリッシュなリビング。スオミの行方をめぐり、男たちが喧々諤々の会話劇を繰り広げるメイン舞台である。「このリビングは、『ラヂオの時間』(1997年)でいったらブース、僕の好きな『十二人の怒れる男』(1957年)でいうと陪審室に当たります。今回は最初からセットがいつも以上に重要な物語になると分かっていたので、美術の棈木(陽次)さんとも相談しながら、かなりこだわりをもって作りました。図面をもらいイメージを膨らませ、実際にセットが建ったら現場にはなるべく長くいるようにした。出来れば誰よりも早くセットに入って、いちばん最後に去りたい。それくらいの気持ちでいないと、僕みたいな、数年に一度だけ映画を作らせてもらう人間は、優秀なスタッフたちと歩調を合わせることができないんです」デビュー作から揺らぐことなく映画に特別な想いを抱き続ける監督が、脚本段階で俳優にアテガキをするのは有名だが、「今回はこのリビングルームにアテガキをしようと思ったんです。あらゆる場所を芝居どころにしようと」と語る。棈木らの手によって細部まで作り込まれた、緻密かつ美しいセット。ただ映像にそのすべてが映り込むかと言うと、映画の場合なかなか難しい。「それがいつも僕は申し訳ないと思っていたんです。こんなに全方位的に細かく作ってくださったのに、映像の中に一度も映らない空間が必ずある。映画畑の皆さんは“映像に残らなくても、俳優さんの目に触れればそこから芝居が変わるわけだから、全然意味がないことではない。だから気にしなくていいんですよ”とおっしゃる。でも今回はあえて、階段やキッチンはもちろん、全部の壁、全部の角、全部の隙間を映像に残そうと思った。美術に関してはそこが最大のこだわりです。棈木さんも、こんなに全部使ってくれるんだ!とびっくりされていました」