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PRODUCTION NOTE
プロダクションノート

原点に立ち返った9本目の監督作
三谷幸喜監督にとって、本作は9作目の脚本・監督作品となる。大ヒット作を多数生み出している三谷監督だが、「毎回自分が作るべき映画、自分にしか作れない映画ってどんな作品なのだろうか?と試行錯誤しています」と謙虚に語る。「映像的なことで言うと、僕より優れている方はたくさんいます。僕は映像作家ではないし、基本は舞台の人間なので長回しも大好きで、ワンシチュエーションの物語が好き。だから映画でもそういうものをやりたいんですが、意外とこれまでやっていなくて。初監督作品の『ラヂオの時間』(1997年)は、もとが舞台劇だったこともありかなり演劇的でしたが、それ以降はなんとか僕にできる範囲で映像の世界に寄せたものをと考えてきました。ただ今回は一度原点に戻って、思いきり演劇的な映画を作ってみようと。限りなくワンシチュエーションに近いセリフ劇をやりたいと思ったところが、出発点でした」
こうして生まれた物語は主人公であるスオミが突然行方不明になったことに端を発した、ミステリー・コメディ。スオミの夫の豪奢な邸宅で繰り広げられる豪華キャスト陣のテンポのいい会話劇は、まさに良質の舞台を見ているかのような贅沢さである。三谷監督の頭の中にあった最初のイメージは、巨匠=黒澤明監督の不朽の名作『天国と地獄』(1963年)だったとか。「恐れ多い話なんですけどね。あの作品の前半はとても演劇的です。ある誘拐事件が起こり、物語はほぼ権藤家のリビングで展開していきますが、全く飽きさせず、ずっと緊張感が続いて、文句なく面白い。事件に巻き込まれた製靴会社の社長を三船敏郎さんが演じ、事件を担当する警部を仲代達矢さんが演じているのですが、何度か観ていてふと浮かんだのが、(この二人が同じ人を愛していたら?)というアイデア。いっそ事件関係者全員が同じ一人の女性を愛していたら、コメディになるぞ……というところから、だんだんと構想がまとまっていきました」